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2022年になりましたが、未だに新型コロナウイルス感染症問題は毎日のニュースで観ない日もなく、私たちは怯えながらも対策を立てて行動しています。
私たちはコロナ渦によって、衛生管理・感染予防に対しての知識、そして行動のあり方を考えてきました。
そんな中、洗剤によって洗浄・殺菌などの知識も広まり、今まで意識していないところにも注目し考え始めました。
「界面活性剤」についてもその一つだと思います。
しかし、「界面活性剤ってなんなの?」「環境に悪いもの」「ウイルス対策に有効」
などいまいち理解していないのではないでしょうか?
界面活性剤とはいったいなんなのでしょうか?
それではみていきたいと思います。
【そもそも界面活性剤とは?】
界面活性剤を解説する上でイメージしやすい食べ物があります。
それは日本人の人気の食べ物の「餃子」なんですよ。
厳密に言うと、この餃子の食べ方には特徴があり、多くの人が小皿に醤油とラー油、そして食酢を入れてから混ぜてたれを作りますね。(私はお酢が嫌いなので入れませんが笑)
この餃子の「たれ」には界面科学的に重要な作用が含まれていて、その作用を持っている化学物質が界面活性剤です。
ギョーザのたれの仕組みに界面活性剤の作用がある。
どゆこと??ですよね(笑)
詳しく説明していきますと、まずこのギョーザのたれに入れるお酢(食酢)が一種の界面活性剤的な働きをしています。
私たちはよく、性格が合わずに仲が悪いもの同士を「水と油の関係」と言います。
「水と油の関係」とは、水と油のようにまじりあわない仲の悪い液体からきた言葉ですが、界面活性剤というのはこの「水と油」のように仲の悪い液体同士の間に入り込み仲良くさせるんですね。
少し専門的になってきますが、界面活性剤の分子の話になってくると、界面活性剤の分子の中には水分子と仲良くできるグループ(親水基)と油分子と仲良くできるグループ(親油基)を同時に持っています。
界面活性剤の中に、水と油の両方と仲良くできる分子がある。
人間に例えると、水の持つ手(親水基)となっていて、油の持つ手(親油基)をもっており手を繋げないイメージです。
水と油は磁石のN極とN極同士のように弾きます。
しかし界面活性剤の手は、片方の手が水と手をつなぐことができ、もう片方の手は油と手をつなぐことができるイメージです。
食酢にも働きは弱いのですが、親水基と親油基があるため、一時的に醤油とラー油を混ざった状態にしてくれるので、界面活性剤の作用を含んでいるんですね。
そういわれると私はギョーザのたれを作る際、醤油とラー油だけなのでラー油はいつも表面に浮いていることを思い出します。
界面活性剤は水の相と油の相との境界で、水分子と接する側には親水基を向け、油分子と接する側には親油基を向けながら両者をつなぎとめる作用をしているんです。
界面活性剤の力によって水と油をつなぐことができる。
【界面活性剤はどんなところで使われている?】
界面活性剤は洗剤だけでなく様々なところで使用されている。
界面活性剤は大きく分けると以下の3つのカテゴリーで使われています。
● 家庭用品や化粧品に使われている界面活性剤
● 食品に使われている界面活性剤
● 医薬品に使われている界面活性剤
皆さんイメージし易く触れることの多い、家庭用品や化粧品に使われている界面活性剤に焦点をあてると、身近な家庭用品で利用されている界面活性剤と言えば、食器用洗剤、衣類用洗剤、衣類用柔軟剤、シャンプーやヘアリンス、クリームなどの化粧品、メイクアップ用品となります。
汚れを落とす食器用洗剤での界面活性剤の利用が一番多く、最初に思い浮かぶのではないでしょうか?
例えば焼肉などを食べて使用した油汚れのついた食器などは、水に浸けていても食器についた油は取れにくくて剝がれません。
しかし、食器用洗剤などの洗浄剤を使用して、食器の油汚れを洗浄すると汚れが取れます。
「洗剤だから当たり前」といえばそれまでなのですが、この当たり前の洗浄効果に界面活性剤の効力が必要なんですね。
食器の油汚れなどは水に浸けているだけではとれない。
それでは界面活性剤が汚れを取る仕組みを詳しく解説したいと思います。
【界面活性剤が汚れを取り除くしくみ】
界面活性剤は汚れにを取り除く仕組みを簡単に説明すると、「ついて・包んで・引き離す」
ということになります。
界面活性剤は界面(水と油、水と空気など)の間にかかる力(界面張力を)引き下げることができるのです。
たくさんの界面活性剤が汚れにつくと、界面活性剤は界面張力を下げるため、汚れの奥にまで入り込むことができます。(湿潤・浸透作用といいます)
この作用により、油汚れが食器に付着する力よりも水に引っ張られる力の方が強くなり、界面活性剤がついたまま水中に浮かび上がるので、水に浸けていても落ちなかった油汚れを洗い流せるわけですね。
界面活性剤の汚れを取る仕組みは「ついて・包んで・引き離す」
ざっくり言ってしまうと、汚れを引っ張ってくれるわけです。
水に浮かんだ汚れは、小さな汚れに分割されて、その汚れは界面活性剤が作る粒子の内部に包まれるために、粒子の内部に包まれた後は食器にもつきません。
界面活性剤を使用した洗浄剤は、このような作用で汚れを取り除くというわけです。
そのため、界面活性剤が汚れを取り除く仕組みは、「ついて・包んで・引き離す」ということなんですね。
【界面活性剤の力を活かす洗い方】
ここで洗濯の例を交えて、界面活性剤の成分について考えていきたいと思います。
洗濯をする時に、洗い物が多いから多めに洗剤を入れた経験はありませんか?
多くの人がこのサジ加減で洗濯をした経験があると思います。
これは、無意識に「洗剤を多く入れれば汚れが落ちる」ということを前提で考えているからだと思います。
参考:正しい洗濯の仕方はこちら↓
洗濯洗剤の主成分も界面活性剤となります。
ここでも食器用洗剤同様、界面活性剤は汚れを取り囲むようにし、汚れを包み込み洗い物から汚れを取り除く働きをしてくれるわけですが、この汚れを取り囲むときに、洗剤の濃度、投入する洗剤の量が関係してくるんですね。
洗剤をたくさん入れれば汚れを取り囲み、取り除くかというと実はそうではないのです。
洗剤の濃度が薄いうちは、洗剤の濃さと洗浄力は比例します。
この場合は、洗剤が多い方が汚れを取り除きやすくなっていき、最も効果的に汚れを取り除く濃度に達します。
これが最適な濃度というわけですが、この最適な濃度を超えてしまうと、界面活性剤が無駄に集まり逆に汚れをうまく取り除くことができません。
最適な濃度以上に洗剤を投入しても、最適な濃度を超えた洗浄力は得られず効果的どころか、余分に投入した洗剤は無駄になり、もったいない事をしていることになります。
これは洗濯洗剤でも、台所用洗剤でも界面活性剤を使用していう以上基本的に同じなので、洗剤を入れすぎるとすすぎが不十分になり、洗剤が残留したり、すすぎに必要な水が多く必要になり、別の問題が生まれるので注意して下さい。
洗剤を多く使用しても汚れが取れやすくなるとは限らない。
メーカーが製品に洗剤の使用量を記載しているのは、この理由があるからなんですね。
例えば、食器用洗剤で何度も継ぎ足さなければ、汚れが落ちない場合などは、界面活性剤が最適な濃度に達していないと考えてください。
足しても汚れが落ちないのであれば、その洗剤自体の界面活性剤の濃度が薄いことも考えられるし、汚れ自体がしつこいことも考えられます。
オーガニック洗剤などは、いくら洗剤を継ぎ足しても汚れが落ちないのは、天然の界面活性剤を使用していて濃度が弱いことが原因なのかもしれません。
この際、何気なく使っていた食器用洗剤を見直して、汚れについて考えてみるのもいいと思います。
汚れを取り除くには界面活性剤の濃度が関係している。
【界面活性剤は環境に悪いもの?界面活性剤の毒性について】
昨今SDGsの観点から、環境に配慮した製品が各メーカーから販売され、オーガニック、天然品を消費者も求める傾向があります。
天然製品は環境、人体にやさしく、合成製品は悪影響と誤解している方も多いのではないでしょうか?
オーガニックなどの天然品、合成品を問わず化学物質には「100%安全なモノ」は存在せず、それぞれの化学物質が有害なのか有害でないのかは、そのものが持つ毒性の強さや組み合わせによって決まります。
オーガニック製品が全て正しく、合成製品は悪ではない。
例えば私たちが毎日口にする、天然の食塩や砂糖、そしてお酒などは摂取する量が多ければ、糖尿病をはじめとする、人体に悪影響がでます。
不思議に思われるかもしれませんが、毒性が高くても正しい使い方と使用量を守れば安全に使用することができますし、毒性が低くても使いすぎれば悪影響がでます。
安全に使用するにはそれぞれの製品のもつ毒性の強さを知り、その製品の適正な使用方法や使用量などの理解が必要なんですね。
安全に使用するためには毒性の強さを知り、適正な使用法、使用量を理解する。
ではここで、界面活性剤の毒性についてお伝えしていきたいと思います。
【界面活性剤の毒性は?】
では界面活性剤の毒性とはいったいなんなのでしょうか?
一言に界面活性剤と言っても、実は数千種類にも及ぶとされているんですけど、ここからさらに、天然ものや天然由来の界面活性物質を含めるとその数は膨大になります。
健康被害や自然環境の破壊が危惧されている今、安全性の観点からそれらの物質について正確な事前評価を行い安全性を判断しておく必要があるとも言えるのでここでご紹介しますね。
そこで界面活性剤の人体や動物に及ぼす影響についてですが、OECD(経済協力開発機構)のガイドラインには数多くの研究がされ、国際データベース化された毒性の強さを見極めるための指標が示されているので、具体的に以下の毒性の一例をご紹介しますので見てみましょう。
界面活性剤が人体や動物に及ぼす影響のデータが、国際データベース化されているんですね。
・急性毒性
・反復投与毒性(慢性毒性)
・遺伝毒性
・生殖毒性
急性毒性の一例として、経口毒性試験を紹介していきますね。
この試験は、製品を誤って飲んだ場合に人体への悪影響を想定するための実地された試験であり、毒性の強さを知るために、対象となる化学物質を動物に食べさせて、その試験を用いた動物の半数が死に至る量を測定し、少量の摂取でも動物が死に至れば、強い毒性、大量に摂取しても死に至らなければ毒性は弱いという結果となる試験と考えてください。
超毒性 | 強毒性 | 中程度毒性 | 軽度毒性 | 事実上無害 |
ふぐ毒 | ニコチン | アンモニア カフェイン | カチオン 界面活性剤 | 食塩 石けん 合成洗剤 |
飲んだ場合の毒性結果試験ですね。
こうして見るとふぐの毒は最強で危険ですね。
意外に思われるのがカフェインが中程度毒性になり大量に摂取すると危険となります。
しかし日常生活程度の摂取量であれば、健康に悪影響はないとされています。
界面活性剤はカフェイン以下の軽度毒性にカテゴリされていますね。
石けんは事実無害にカテゴリされていますので、小さなお子さんがいらっしゃるご家庭では、お子さんが洗剤系の誤飲リスクを考えると、石けんの使用が良いのかもしれませんね。
【界面活性剤の環境面への影響】
界面活性剤が環境にどのように影響があるのでしょうか?
洗剤に界面活性剤が含まれているので、ご家庭からの排水に界面活性剤は含まれます。
そしてそれらは、ほぼ公共の下水処理場で処理されて環境に排出される流れですね。
この流れの中で界面活性剤が環境にどう影響しているのかが問われて、皆さんが気になるところでもあり、「界面活性剤が悪」とネガティブなイメージを持たれる原因とも言えます。
界面活性剤は環境中に排出されるとどうなる?
ここが皆さんの疑問であり、環境面への不安であると思います。
排出された界面活性剤は微生物により分解を受けて、最終的に炭酸ガスと水にまで分解されます。
え?微生物??
そうです!微生物によって分解されるんですね。
ただ界面活性剤は種類が多いので、素早く分解されて自然界からなくなるものと、完全分解までにかなり時間を要するものなどがあるのも事実です。
界面活性剤は種類によって完全分解までに時間差がある。
SDGsの観点から、環境に配慮した洗剤を開発しているメーカーなどは、この生分解性の良いものを開発して環境に配慮しようと努力しているんですね。
専門的になってしまいますが、環境低負荷型界面活性剤として、生分解性界面活性剤、ジェミニ型界面活性剤、バイオサーファクタントなどが代表的です。
洗剤の環境に配慮した製品というのは、界面活性剤が天然成分、また界面活性剤を使用していない製品販売している。
少し代表的な製品を紹介します。
▼ざっくり紹介しますと、生分解性は水中のバクテリアによって容易に分解される界面活性剤を指し、リン物質や胆汁酸などの天然に存在する界面活性物質や天然物の再結合による界面活性物質がこのカテゴリーとなります。
▼次世代型界面活性剤としてはジェミニ型界面活性剤が期待されていて、製造コストが高いこともあり、日本では高級化粧品に利用されていることが多いですが、洗剤にも利用されている製品もあります。
▼バイオサーファクタントは微生物によって生産される両親媒性分子で、複雑で崇高い構造、低濃度で高い界面活性となり、特に大豆油を原料とし酵母によって生産される、マンノシルエリストールリピットは比較的安く製造できるので、食器用洗剤として販売されていまね。
【界面活性剤の環境毒性はある?】
次に界面活性剤が環境への負担はどうなっているのか見ていきましょう。
環境への配慮を考えて、維持・安全を行う指標の1つとして環境毒性を評価することがありますが、主に水生生物への界面活性剤の毒性評価を行い、環境への影響の大きさを予測します。
水環境は生息する生物の食物連鎖の中でバランスが保たれていますね。
藻類からミジンコや魚に対する界面活性剤の毒性を調べます。
これによると、代表的な界面活性剤4品種について、日本都市部での環境予測濃度と環境影響濃度の予測値を対比したデータがありますが、全ての品種で環境濃度は無影響濃度をはるかに下回り、界面活性剤の環境への悪影響は生じにくいことがわかりました。
海藻類からミジンコ魚など水環境、界面活性剤によって環境への悪影響は生じにくいことがわかっています。
市場で販売されている界面活性剤を使用している洗剤は、【化学物質排出把握管理促進法】特定化学物質の環境への排出量の把握及び管理の改善の促進に関する法律(長い!)
があり、ここで指定されている界面活性剤をメーカーも使用しているので、ご家庭で使用する通常の条件下では、人の健康と生態系に影響を及ぼすリスクは極めて小さく、安心して使用できるということなんですね。
すなわち現在の日本で販売されている洗剤で使用されている界面活性剤は、安全であり環境への悪影響は極めて小さいということなんです。
界面活性剤は環境への影響は極めて小さく安全なんですね。
参考:食器用洗剤について詳しくはこちら↓
【界面活性剤のまとめ】
いかがでしたでしょうか?
洗剤を語る上で重要な化学物質の界面活性剤の疑問が解け理解していただけたと思います。
界面活性剤は複雑な部分もありますので、今までフワッとしか理解していなかった部分をスッキリしていただけましたでしょうか?
なぜ食器の汚れが落ちるのかを理解していただき、界面活性剤の特性を大まかではありますが知ることで、間違った洗剤の使用法をなくし洗濯や食器洗浄も正しくすることができると思います。
人体への不安、環境面での不安や疑問も今回解決し、界面活性剤について少し理解していただいただけでも、洗剤の使う見方も変わったのではないでしょうか。
環境のことを考えるなら、無駄な洗剤を使うことなく効率よく使用していただくことが大事だと理解していただけたと思いますし、環境に対する不安も解決でき、安心して様々な洗剤を試してみる手助けになればと思います。
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